『御伽草紙戀姿絵』とは・
あらすじ
『御伽草紙戀姿絵』
人気楽曲「ロミオとシンデレラ」を劇中曲に使用した、超歌舞伎の新作『御伽草紙戀姿絵』が、雌伏の時をへて、2021年4月、ついに幕張メッセに降臨します。
この『御伽草紙戀姿絵』は、土蜘伝説(つちぐもでんせつ)を題材とした、近松門左衛門の『関八州繋馬(かんはっしゅうつなぎうま)』や、桜田治助の『我背子恋の合槌(わがせこがこいのあいずち)』、山東京伝の『善知鳥安方忠義伝(うとうやすかたちゅうぎでん)』などをふまえて、創作された作品です。
平将門の忘れ形見である七綾太夫(ななあやだゆう)と、源頼光(みなもとのよりみつ)の戀物語を軸に、日本を魔界にしようとする、女郎蜘蛛(じょろうぐも)の精、山姥茨木婆(やまんばいばらぎばば)といった物の怪たちの野望の顛末と、平井保昌(ひらいのやすまさ)と袴垂保輔(はかまだれやすすけ)の活躍を描きながら、物語が展開していきます。
中村獅童さんが源頼光と盗賊袴垂保輔の二役を勤め、初音ミクさんが七綾太夫役で初めて悪役に挑むのも、この度の大きな話題です。また中村蝶紫さんが山姥茨木婆役を、澤村國矢さんが頼光の重臣平井保昌役を勤めます。そして歌舞伎俳優に加え、アクションやアクロバット、さらに女流舞踊家の皆さんと、超歌舞伎ならではの多彩な顔ぶれが揃いました。
歌舞伎の醍醐味溢れる2021年の超歌舞伎『御伽草紙戀姿絵』にどうぞご期待ください。
今年の見どころはここ
その壱 ミクさんが唄い踊りますミクさんが初めての悪役を勤めるのが話題のひとつではありますが、今回の作品では〝拍子舞〟のご趣向で、劇中でミクさんが唄いながら踊る場面が見どころとなっています。この拍子舞とは、歌舞伎舞踊では古くからある演出で、三味線の演奏にあわせて、自ら唄い、踊るものです。戀づくしの長唄を唄いながら踊る、可憐なミクさんの姿は必見です。
その弐 さらに深まる古典歌舞伎の色超歌舞伎では、これまでも古典歌舞伎でつちかわれてきた演技、演出術が取り入れられてきましたが、今回はさらにその要素が深まっています。例えば、発端の暗闇のなかで宝物を奪い合う〝だんまり〟や、第二場の様式美のある殺し場。また第三場の拍子舞や悪事を働いた人間が善人に戻る〝もどり〟。さらに大詰の立廻りと、歌舞伎ならではの演技、演出、趣向に溢れた作品となりました。
その参 進化するデジタル演出アナログな歌舞伎と最新のデジタル技術を用いた演出の融合が超歌舞伎の特色のひとつですが、今回もさらに進化を遂げたデジタル演出が大きな見どころとなっています。どのようなデジタル演出が披露されるのか、ご注目ください。
『御伽草紙戀姿絵』にはこうした見どころのほか、もはや超歌舞伎の型といっても過言ではない、観客参加型の演出もあります。皆さんの熱い思いを舞台に届け、観客と舞台が一体化した超歌舞伎の魅力を今回もご堪能ください。
あらすじ
発 端 都老の坂の場時は平安時代。日の本を魔界にしようと物の怪たちが暗躍しているなか、源頼光主従はこれを防ごうとしている。そんななか、頼光の重臣平井保昌が女郎蜘蛛を退治するが、その場に山姥茨木婆が駆けつけ、自らの秘術で女郎蜘蛛を復活させるために、嫉妬深い女の生き血を得ようと、九條の廓を目指す。一方、世間を騒がす盗賊袴垂保輔は、物の怪の術を破る秘法を記した一巻を偶然に手に入れる。
第一場 都九條廓内揚屋の場ところは変わって九條の廓。いま全盛の傾城七綾太夫の色香に迷う頼光を諫めに、保昌がやって来るものの、頼光は不機嫌な様子となる。これを仲裁したのは当の七綾太夫。頼光は七綾太夫との後ほどの対面を約束し、その場をあとにしてく。
第二場 都九條廓内揚屋奥座敷の場やがて七綾太夫の休む奥座敷に、袴垂保輔がひそんで来る。保輔は、七綾太夫が平将門の息女七綾姫であることを見破り、将門とは仇敵になる頼光との戀を諦めるようにと説得する。だが、七綾太夫は、自らの戀を貫く覚悟だと言うので、ついに保輔は七綾太夫を手にかける。
保輔が立ち去ったあと、やって来た茨木は、虫の息の七綾太夫に頼光に許嫁がいることを明かし、嫉妬の念を起こさせると、女郎蜘蛛の生き血をその体へ注ぎ、七綾太夫の亡魂と女郎蜘蛛が合体した化生を出現させる。
第三場 源頼光館寝所の場その後、頼光は七綾太夫を亡くした悲しみから病の床に臥せっている。そこへ胡蝶という女が現われ、頼光は戀の病だと言って、戀づくしの踊りを踊り始める。だが胡蝶の影が蜘蛛の形であることに頼光主従は気づくので、胡蝶は千筋の糸を投げつけ、そのまま姿を消す。
そこで頼光は化生を退治しようと勇み立つものの、保昌は簡単に退治することはできないと悟り、思案に暮れる。そんな保昌の前に現れたのは、盗賊となって勘当された、弟の袴垂保輔。保輔は意外な事実を兄に知らせ……。
大 詰 音羽山清水寺奥の院の場清水寺の奥の院に逃れた化生の行方を追う保昌の前に、茨木が立ちはだかり、保昌に危機が迫るところ、頼光が駆けつける。そして七綾太夫の亡魂と女郎蜘蛛が合体した化生が出現して頼光主従に襲いかかる。